介護現場によっては、認知症の利用者と接する機会も出てきます。認知症とは、脳の病気や障がいなどさまざまな要因によって認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態のことです。
認知機能とは、記憶力や判断力、理解力など、物事を考えたり、判断したりする能力のこと。当然ながら、これらの能力が低下すれば、介護士とのコミュニケーションでも多くの困難が生じます。ここでは、そんな認知症の方特有の症状や、介護士側が感じる負担に言及していきます。
認知症の方は、症状の進行に伴い、意思疎通が難しくなってきます。自分が何をしたいのか、何が言いたいのかを、うまく伝えることができなくなり、イライラし、怒りっぽくなってしまうケースもあるものです。中には、怒りを処理できずに、介護士に暴言を吐いたり、攻撃的な態度を取ったりする方もいます。暴言や暴力は、認知症特有の症状と理解していても、介護士にとっては身体的、精神的な負担となるものです。
また、認知症の方は、「徘徊」という症状が現れる場合があります。徘徊とは、目的もなく、屋内外を歩き回ってしまうことです。徘徊は、事故やケガにつながる危険性が高いため、介護士は常時目を離すことができず、精神的な負担も大きくなります。
さらに、認知症の方は、被害妄想や、幻覚などの症状が現れる場合もあります。実際、「誰かに財布を盗まれた」「知らない人が家の中にいる」など、現実にはあり得ないことを本当にあったことのように思い込んだり、実際には存在しないものを語り始めたりすることがあります。
上記のような症状を見せる認知症の方と接する際、まず安心させることが大切です。そこで否定したり、叱ったりするのはNGです。ますます不安になり、落ち着かなくなってしまいます。対処するときには、面と向かって認知症の方の気持ちに寄り添い、共感しましょう。認知症の方の尊厳を守り、根気強く対応することで、症状が落ち着くことが多いです。